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 もう一度、この船の大まかな構造を説明すると、この船は立派な帆船である。
 しかし、他の帆船とはすごく違和感を感じる船である。
 それはこの船の中央少し前に大きな中空洞の鉄でできた円柱があることだ。いわゆる煙突である。
 コンタ・ロスノフスキは帆船のメインマストに登ろうか、その煙突に登ろうか迷ったが、一番登りやすそうなのはそのマストだったので、一気に駆け上がった。

“船長、八時の方向に何か見えます”
 メインマストで見張りをしているクルーから連絡が入った。
「島かそうでないかは分かるだろう?」
“船長、私はここでもう五年も働いてるんですよ?”
「五年経ってもダメなやつはダメさ」
 バゼイシャー・ガワーは目配せして周りのクルーに、一切の情報が客に漏れないよう、放送を切らせた。
「で?」
 そこにいるクルーは今日の大まかなスケジュールと、天気による波の動きなどを確認しながらも船長の動きを常に確認していた。
“はい。まだ遠めで確認は取れませんが、こちらに向かっています”
 彼はそれを聞くと、舌打ちをして帽子を深くかぶった。
 それを見ていた人たちは、船長から目を離し後三十秒で自分のやるべきことを終わらせなければならなかった。
 この合図が最後に出たのは半年前だった。
「分かった。確証が出るまで頼むぞ」
はい(イエッサー)
 ここで連絡をきろうと、顔から離した。
“おまえ、どうやってここへ?”
 受話器の向こう側で声がした。
「おい、一体何が……」
“な、何だあのジャンプ力は”
「状況を……」
 向こう側は彼の声に気づき、
“あ、はい。コンタがここに来て”
「何?」
“跳びました”
「とんだ?」
“……あ、降りてきた”
 ぎしりと音が聞こえると、若い声が聞こえた。
“バズさんにつながってます?”
 向こうが答えるのよりも早く、バゼイシャーが答えた。
「つながってる、早く話せ」
“え、ああ、はい。なんかあっちに骸骨が描いてある船が見えるんですけど、あれって海賊船ですか?”
「何?」
“ほら、あの向こうに見えるのそうですよねぇ?”
“おまえ、見えるのか?”
“ええ、したじゃよく見えなくて確信なかったんですけど、さっき確信して、ここで確証しました”
 どうやら、見張り台の方で話しているらしい。
“船長”
「伝えずとも聞こえた。操舵室のやつら全員にな」
“………”
“スノ。コンタと代わっておまえは見張り台から降りろ”
“え……”
「どうやら、望遠鏡よりそいつの目の方がいいらしい」
“は、はい”
 スノ・ホッホは少しためらいがちに返事をした。
 ここから降りたくはなかったのだ。
「安心しろ、二年前からおまえはそこで役に立ってきた。今回だけ、下でそこでの経験を役立ててくれねぇか?」
は、はい(イ、イエッサー) !!」
 それだけ言って回線は切れた。



 スノが操舵室に来るまでバゼイシャーは海図と方角計を用意し、クルー全員にちゃんと胸ポケットに 葉っぱ(,,,) が入っているか確認させた。
 クルーの一人が気づいて、
「たぶんコンタは持っていないんじゃないでしょうか?」
 と、聞いたが、
「別に、必要ない」
 と見張り台連絡回線用パイプを指差した。
 ばたんと音がしてスノが戻ってくると、バゼイシャーは船内客室連絡回線用パイプを取り出し、クルー一人にメモと一緒に渡した。
 彼は自分の声では客を誘導させることが困難であると、自分の短所に気づいていた。
「ご乗船の皆様、 (わたくし) どもの船アルカベルノ号はクルーのサーヴィスを除けば、おおよそ満喫していられるかと思います。」
 彼はここで一息をついて、
「実は (わたくし) どももさきほどのことで驚いたのですが、世界的有名な手品師ダニエル・シューバート氏がご乗船のようで、本日十四時から船首甲板にて手品を披露してくださるとの許可を得られました。あと三十分後の唐突な話ですが、どうぞいらしてください。それでは、しつれい致します」
 連絡パイプのふたを閉めると同時に、
「俺が残れと言った奴以外は客をなんとしても甲板へ出させろ」
 さっきのクルーの背中をぽんぽんとたたいて、緊張をほぐさせた。
「寝ている人には異性を連れて行け、おまえらに女や男がいないわけがない」
「はい。船長」


 自分たちの胸の葉っぱがカサカサと音を立てると、即座にクルーはそれを取り出し耳にあて
“聞こえていたと思うが、ダニーがこの船に乗っていないのくらい分かっているはずだ。わかったな?”
 そう聞こえると、こちらから返事をすることはないので即座にまた胸ポケットへもどした。
 そういわれて、より丁寧なサーヴィスをしてクルーは乗船客を甲板へを促した。
 あるまだここで働き始めて半年もしないクルーが先輩に質問した。
「一体どういうことなんです?」
「何だおまえ、教育係に教わらなかったのか?」
「え、すいません」
「しょうがねぇなぁ……あ、お客様もどうです、見に行かれませんか? お客様のような美人な方であれば、そこへ御行かれになれば、注目の的ですよ? はい、間違いなく。そうなされますか? では、もしよろしければ案内を (わたくし) に」
 彼が少し太めの、大きな首飾りをした女性を案内しようとして、彼女の注意が一瞬それたときに、
「船長は顔にこれ以上傷をつけたくないんだよ」
 そういって、彼は彼女を連れて行った。
 新人クルーはそれを聞いていつもの笑顔で客にサーヴィスできる自信がなかった。



「今回の乗客数は」
 ほぼ怒鳴り声に近かった。
「はい。船長。今回の乗客数は (わたくし) たちを抜いて女性子供が三十八人、男性が六十四人の計百二人です」
「よし、最終航路のためか意外に少なくてよかった。じゃあ男で体に負担のあるヤツは?」
「船長より年齢を重ねているのは十五人です」
 連絡パイプを取り出し、
「最近新しく買った小船があるだろう、何人くらい乗れる」
 相手は止まることなく、
“二十人強は乗れそうです”
「記憶の限りだと船は五隻あるな」
“他のは十人が限度かと”
「頑張ってできる限り乗せるよう考えておけ」
はい(イエッサー)
 そのパイプを投げ出し帽子を机に押し付け、もう一つのパイプを手に取った。
「合図と同時に。だ」
 返事を待たずに机に戻り、
「で、間違いじゃねぇな」
 海図を広げて、スノに問いただした。
「はい。八時の方向に船の確認。幸運なのはアイツによる早期発見。不運なのは風が向こうの船にとって追い風であることです」
”すみません”
 連絡パイプのほうで声がした。
「何だ。何かわかったか?」
”今気がついたんですけど、骨じゃないんですよ”
「骨じゃない?」
”ああ、いや頭蓋骨は骨なんですけど……”
「なんだ」
”あのバッテンのところが骨じゃなくて、なんか針みたいです”
「針、ね。十分だ。ほかに何かあったら連絡しろ」
”あ、はい”
 連絡パイプから口を離して、頭をかいた。
「海賊の名前がわかった」
 海図に目を目を落としすと、
「ミルグラント・ビー、だな」
 船長をさえぎって副船長が答えた。
「ああ。懸賞金は……」
「八十万ランカ六十二ラリン」
 また、彼のほうが早かった。
「じゃあ……」
「そろそろ出すか?」
 またまた彼のほうが早かった
「コウタ・クロイ」
「なんだ、バゼイシャー・ガワー」
 船長バゼイシャーが鋭くにらんでも、副船長コウタは特に気にしていなかった。
「コイントスで勝ったからといって、いい気になるなよ」
「ふふ、三日前のことをまだ気にしていたのか。しかし、そのときに入った少年との会話はなかなか面白かったよ」
 バゼイシャーが仕事募集をすることになったのは、コウタとコイントスで負けたからである。
「しかし、ロロック島はやはりパスタ発祥地だな。一流のホテルよりおいしかったよ」
 バゼイシャーの舌打ちを無視できる彼は、確実にこの船じゃなかったら船長の (うつわ) で、一財産(ひとざいさん)稼いでいるだろう。
「さて、そろそろ……」
 がちゃりとドアが開くと、
「全員、船首甲板に集まりました。あと、ロク王国の三人も」
 クルーが報告した。
「じゃあ、いってくるよ」
 そういって、コウタは操舵室を後にした。
「必要な時間が無駄な時間になっちまった」


 この時間の数分前、パプリコでは、
「今の話、本当かしら? あの有名なダニエル・シューバート氏がこの船に乗船しているなんて」
 ミグナ・ハーティコートは放送を聞いて目を輝かせた。
 彼女は手品が練習と同じくらい好きだった。
「こんなところで、ゆっくりお茶している場合ではありませんわ。すぐに行かなくては」
 立ち上がって向かおうとしたが、
「失礼いたします、ミグナ・ハーティコート様」
 パプリコのウェイターに引き止められた。
「少しよろしいですか?」


 同時刻。
「いったい何をしたんだ?」
「いえ、別に。ただ彼女を起こそうとしただけです」
 起こしに行ったクルーは船の中でも端正な顔立ちで、彼自身も自信があった。
「腫れているだけなら、冷やせばよくなる」
 彼の右目の青あざがいやでも目に入った。
「うう、寝ている女性に殴られたことなんてなかったのに」
「引っ掻かれたことはあるのにな」
「助けてくださいよ、先輩」
「ここのへやはお前の当番だろう? 自分で何とかしな」
 そういって彼はニヤニヤしながら出て行った。
 残されたその端正な顔立ちの青年は彼女を見つめなおして、ため息をついた。
 静かに寝ている彼女リコ・キリワタはおきているときの活発な女性とはまるで別人で、長く整った (まつげ) がよりいっそう彼女を清楚で可憐に見せた。
 瞳と同じオレンジ色の髪は寝ているときも活発に見せる力はなかった。
「よし、もう一度」
 彼は大きく息を吸い込んで、はいて、再度彼女を起こそうと彼女に近づいた。
「寝ているところ大変申し訳ありません。リコ・キリワタ様。お話した………ぐわっ」
 彼女の寝返りの裏拳は彼の鳩尾(みぞおち)にはいり、呼吸がままならなくなった。
 後何発喰らえば彼女を起こせるかはわからない。
 しかし、すぅすぅと寝ている彼女はとても幸せそうだった。


 そしてまた同時刻。
 彼ロウトーゼ・カースクレイクもまた、海賊船のいる方角を眺めているときに、クルーに呼び出された。


「よし、帆をたため」
 右の連絡パイプ。
「いいぞ。いけ」
 左の連絡パイプにそれぞれ叫んだ。
 ボオオオォォ
 という轟音とともに船は速度を上げた。


「ええ、初めに謝らなくてはならないことがあります」
 コウタ・クロイは右目の黒い眼帯を少しいじった後、口を開いた。
 両脇には数名のクルーと、そしてロウトーゼ・カースクレイク、リコ・キリワタ、ミグナ・ハーティコートが並んでいた。
 一人は後ろを向いて空を見上げ、一人はまだ眠そうにあくびをし、そしてもう一人はがっくりと肩を落とし、すこし悲しそうだった。
「いま、船首を十二時として、二時の方向に小船を六隻用意いたしました」
 帆がゆっくりとたたまれ始める。
「私が合図をしますから、そうしたら女性、子供、六十歳以上の男性女性の方を優先的にお乗りください」
  縄梯子(なわばしご) が小船に向かっておろされ、コウタ・クロイは息を吸い船首に背を向けている人にためらうことなく、
「この船はミルグラント・ビーに、つまり、海賊船に狙われています」
 そのすぐ後に轟音が鳴り響いた。


 操舵室ではこれで、距離を離せると誰もが思った。
「これで引き離せますね」
 一人のクルーがバゼイシャーに話しかけた。
「まだ気は抜くなよ。まだ、助かったという保証がない」
 バゼイシャーだけが気を抜かなかった。
“すいません”
 連絡パイプから声がした。
「何だ、コン」
“向こうも煙突から煙吹いてます”
 バゼイシャーは目を見開いて
「煙だと?」
“はい”
「ほかには?」
 コンタの無言に彼も黙り
“んん。ほかにはぁ。あ、向こうは帆はたたんでありません”
「なに?」
“ああ、後なんか白くて薄い、雲みたいなのがバナナの形をしてブーメランみたいにくるくる渦巻いてます。すごいスピードでどんどん近づいてきます”
 それを聞くと、机に痛くなるほどこぶしをついた。
「ちくしょう」
 彼はコンタや彼の周りに聞こえるように叫び、
「コン、すぐに戻って来い! もう見なくてもい……」
 ゲギャアアアアァァァ
 人間の声では絶対に出せない声が海賊船から聞こえた。
“ええ!? なにあれ?”
 声だけでなく態度も驚いているのが感じ取れた。
「……まさか」
“オレンジ色の恐竜だ”







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 こんにちは、Barovsです。
 まあ、休みに入りましたので、進むのか続きを書きました。
 船の構造とか分かりませんから、主にインターネットで調べました。いろいろ名前があるんですねぇ、名前が。
 いま、ジャンプの連載で『ONE PIECE』がやっていますが、おそらく何度の何度も、船の資料を調べて構造を思い出し、見たり触ったりしながら描いたのではないかと考えたりしてます。
 皆さん海賊と言われれると、どんな物語を思い出すでしょうか?
 私の場合は『ONE PIECE』の海賊ではなく、『ドラえもん』の映画シリーズや『ピーターパン』に出てくる海賊がそもそもの原点です。
 『ドラえもん』では何度も海賊が出てきますがその中に出てくる人たちはいつも、地図を片手に財宝探しをしていました。
 『ピーターパン』ではまた違い、“子供の敵”と言うイメージが強かったのですが。それはそれで、私のイメージに深く残っています。
 そんなこんなで、海賊船の話を書きます。
 海賊船を出そうという理由は、海の上での悪いヒトが海賊しか思いつかなかったからです。
 がんばって、見事にこの章を終わらせます。
 それではまた、私に書く機会があるのでしたら。

 乱筆多謝

 作中ちょこっと解説
海図(かいず): 陸を表記しているのが地図で海を表記しているのが海図です。
方角計(ほうがくけい): コンパスのことです。羅針盤といいますが。難しいそうな名前なので、方角を計る道具として出しました。もしかして、こっちのほうがわかりずらいかしら?
甲板(かんぱん):これは船の先頭部分にある広場のことです、たぶん。


 

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