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「ですから、何度謝れば許してくれるんですか?」彼女ミグナ・ハーティコートは声を大にして叫んだ
「だぁかぁらぁ、別にもう怒ってないってば」彼女リコ・キリワタもまた言葉尻が高くなってきた。
「とてもそのようには思えません。何かにつけて私のミスにするのですから」
「考えすぎだって」もう一度リコは思い出したように「ミグが乗る船を間違えたこと以外は」と付け加えた。ミグナは言い返そうとするが。
「二人とも、もう戻れるんだからいいじゃないか」彼ロウトーゼ・カースクレイクは少し困った微笑を見せていた。
 ミグナは普段は二重の凛々しい目の持ち主であるが今回ばかりは鋭く、そして真っ直ぐな蒼い目で相手を圧倒させんばかりの視線をリコに向け、一方リコはその視線に負けじと身長を生かし、オレンジ色の目で見下す視線をとり続けた。もともとすらりと長い蒼い髪の持ち主であるミグナ・ハーティコートとショートカットのこれもまた目を見張るようなオレンジ色の髪を先祖から受け継いだリコ・キリワタの二人は出会ったときから自然とライヴァル意識があった。今回の二人のいがみ合いはそれほど長くは続いていないのだが堀を深くさせているのは二人以外の何者でもなく、それはヴェルトリオールでくるぶしが隠れるほどの折り目のある藍色のスカートを着こなしているミグナが行く先を間違えたときから始まり、少なくとも2週間は経っていた。はじめはミグナが責任を感じ、おとなしくしていたものの。この二週間――正確に言うと十日あたり――で臙脂色の長いタイトなズボンを着けているリコに何かにつけ自分のせいにされるのを嫌い、言い返し始めた。この船に乗るときには対等に言い返せるようになっていた。
「ですが、ロウトーゼ隊長。ミス・リコが私に話すときのしゃべり方がどうしても気になるのです」いくらかトーンは下げたもののロウトーゼに発せられた声も二人の距離には十分すぎるほど大きかった。
「ミグが神経質すぎるんだよ」リコは言葉に上乗せをしてきた。「もしくは相当は階級出で」
 と含みのある発言をした。
「どういうことですか?」ミグナは考えもせずに答えを聞き出した。
 その質問にリコは「上流階級出は、自尊心も高ければ声も高いということさ」とすっぱりと言い切った。
「……八番隊に三番手は二人も要りませんわ」少しの無言の後に、ミグナは静かに切り出した。
 その言葉と同時に、左腰にある剣の鍔に左親指を掛け、右手のひらを柄に上から押し付けて、おそらくその剣と同じくらいかそれ以上の鋭い目をリコに向けた。 「私も八番隊には私のほかにもう一人いると聞いたが、みたことないなぁ」リコは右手のひらを額に親指からあて遠くを見るそぶりをして「小さくて」ゆっくりを視線を下に下げて聞こえる独り言を言った。
 ムカッ
 という表現がこの部屋の中にあっているようでさすがのロウトーゼも「二人とも」とあきれた笑みを見せ二人の間に入った。
「し、しかし、ロウトーゼ隊長ぉ」
「どっちが悪いかは明白です」
 二人はロウトーゼに口々に相手を非難して、自分を正当化しようとするが彼は「毎回その君たちのケンカでの被害とそれを弁解する人の身になってくれないかな? 今日の昼食のコトを忘れたわけではないよね、第一君たちが三番手なのは試合で決着がつかなかったからでしょう? 身体的な理由ではなく本人自身からきているのだから。君たちの言い合いのことは全く関係ないんだよ?」
 ロウトーゼはこれで国を出てから46回目の仲介にはいった。その仲介率は……
 むににぃ。
「ひたたたぁ」先に手を出したのはリコだった。そしてすぐさま相手に右頬をつねられて、うまく言えずも罵声を浴びさせるとミグナは同じようにリコの右頬をつねり返した。

 0パーセントだ。

 二人は二本の手を使って、相手の両頬をつねりはじめた。次の一手を出したのはミグナであり、彼女は突然リコの頬から手を離し、彼女の黒いTシャツの胸倉をつかみ、自分の背を充分に生かし相手の正面に自分の背中をぴったりと合わせ、自分の頬から手が離れるのを痛いながらも感じると「たぁ!」と前に投げ飛ばした。
「わわっ」
 一瞬の出来事だったので、リコは投げられたのに気づくのに少し時間を要した。そして急いで体勢を立て直そうとするが間に合わず、
 バカン!
  ドア(,,) に背中から衝突した。
「……」
 ロウトーゼは言葉もなく右手で自分の片目を隠すように手を当て、あきれている様子だった。それでも出した唯一の言葉は
「……あちゃー」普段の彼なら絶対に出さない言葉を小さな声で言った。
 リコはそこからすぐに立ち上がって、ミグナに向かって――飛び掛ってというものに近い――いった。
「この!」
「よくもやりましたね?」
「それはこっちのせりふだ!」
 二人は武器を取らなかったものの部屋においてあるありとあらゆるものを投げ始め、枕、コップ、観賞用植物に服。エスカレートしてくるとベッドや金庫まで投げ始めた。
 ロウトーゼは吹き出てくるほこりや物から身を守ろうと状態を低くして、もう今では鍵の意味を持たなくなったドアがあったほうへ向かっていった。
「……全く……プライドとライヴァル心が強いのはわかるが、周りの物品は強くないことを知らないんじゃないだろうか?」
 そういって、向かいの壁に無残に立っているドアに手をかけようとしたとき。
 そのドアの手前に靴が片方落ちているのに気がついた。投げられたのはリコだから、きっと彼女のものだろうと振り向いて彼女を見るが、ほこりが舞っていてもリコの足には両方きちんと履いているのが十分確認できた。
 そして、ロウトーゼはもう一度その床にコロリと転がっている靴を見。そして正面にあるドアを見つめた。
「……」
 ロウトーゼは考えられる最悪の状況を考え、整理し、その状況を噛み砕くと、一気にぶわっと汗が出てきた。
「……まさか」
 ゆっくりとドアを取り除こうとして、その中から足が見えた途端に一気にドアをそこからどかした。
 一人の少年がそこで、目をグルグルさせてしりもちをついていた。
「だ、だいじょうぶかい?」
 ロウトーゼは少年の肩をつかんで揺らした。
「う、うーん」
 ペシペシ
「う、うん?」
「大丈夫かい?」
 少年はゆっくりと目をさましたようだ。
 ロウトーゼは本当に目が覚めたのかわからなかったので、もう一度「大丈夫かい?」とたずねると、「あ、はい。大丈夫です」と目は閉じたときと変らない少年はそれに答えた。
「いたたたぁ」と少しうなりながら腰とあげると、「ごめんね。怪我は無いかい?」怪我をしてないか少年の周りを見た。
「大丈夫です。ちょっと顔とおしりが痛いですけど……それ以外はなんともありません」
 おしりをさすって立ち上がった。
「よかった」
 彼はロウトーゼから覗き込むように後ろと見て、
「いったい何があったんですか?」
「いや…ちょっとね」
「はぁ……」
 ロウトーゼは部屋に戻っていき、少年はそれについていった。
「……うわぁ」
 ミグナ・ハーティコートとリコ・キリワタの二人は盛大に周りのものを壊した挙句にポカポカと殴り合ってけんかをしていた。
「すごい事になってますねぇ」
「いいかげんにしないか。君たち」
 二人はぜんぜん耳に入っていなさそうだった。
「……ふう。本当に悪いことをしたね」
 ロウトーゼ・カースクレイクは少年のほうを向き、もう一度謝った。
「こうなると手がつけられなくて」
「は、はぁ」
「ちゃんと弁償とそれなりの賠償金は払うよ」
「はぁ」
 少年は呆然とこの状況をみて生返事で答えた
「当然、君のチップも謝礼金を込めて多く出すつもり」
「はぁ………え? あ、いや、別にいいですよ。たいした傷とかしてませんし」
「いや、させてもらうよ。本当に悪いことをしているからね」
 ポケットから財布を出すとそこから二、三枚取り出して彼に手渡した。
「こ、こんなにいただけませんよ!」
 おもむろに彼はそのお金を相手の手のひらに戻そうとするが
「ふふ。大丈夫。まだたくさんもっているから」
「いや、そういうもんじゃなくて」
「とっておきなさい」
「………」
「とって、おきなさい」
「……はい」
 そういうとロウトーゼはきれいな水色の瞳の目を細くして微笑んだ。
「さて、本当にもういいかげんにしないか」
 少年の糸目から彼女らのけんかに目を向けた。
「あ、あのう」
「ん? ……ああ、弁償金かい? それなら彼女たちに払わせるよ」
「あ、そうじゃなくて……」
「なんだい?」
 けんかに目を向けていたときのあきれているものと違い、にこやかな笑顔を少年に向けた。
「……いいんじゃないですか?」
「なにをだい?」
「けんかを止めなくても」
 ロウトーゼは不思議な顔をして、
「なぜだい?」
「けんかだからです」
「え?」
「いや、だって……」少年か彼女たちのほうを見て「……だって、けんかって友達としかできないじゃないですか」ポツリといった。
 ピタッ
 ロウトーゼがとめに入っても止められなかった二人の動きが少年のその一言で止まった。
 そして、今度は少年がにこやかな笑顔をロウトーゼにしてみせ
「友達とじゃなければ、それはただの殴り合いだし」
 ロウトーゼはふと感心したように彼を見つめた。
 すると少年は
「それにきっと、ああ見えても」大きく笑ってみせ「仲がいいんですよ」
「友達じゃないのにああゆうことやるのってなかなかできませんから」
 言葉を続けた。
 ……この子……
「……」
「……」
「「……」」ミグナとリコの表情の伺えない二人はお互いを見詰め合ったままだ。
「……は!」と少年は何かに気づいたようで「す、すみま、いえ、失礼しました」突然あせりだした。
「お客様になんて口の聞き方を。言い訳の仕様がありません。ああ、なんと言うことを、本当に失礼しました。チップはお返しします」
 少年はロウトーゼにチップとつき返すように渡すと、急いでドアの前に立って、振り向き、早口で
「とても、快く使っていただきありがとうございます。この船旅をよりよくするために (わたくし) どもよりいっそう、努力させていただきます。」
「あ、ちょっ……」ロウトーゼは言葉をかけようとするが
「そして、そのまず一つとしてご夕食のご案内を……。夕方17時半より最上フロアの"パプリコ"でビュッフェ形式のレストランでご夕食となります。どうぞお召し上がりください」
 彼は一歩後ろへ下がり、
「それでは、またこのフロアが私担当であるのを切望しております。失礼いたしました」
 廊下に出てドアを持ち上げて元に戻すと少年はすぐに行ってしまった。
「……ふむ」
 渡したはずのお金をみて、
……あの子、面白い子だな……
 そう思いながら少年の出て行ったドアから視線を彼女たちに向けた。
「「……誰が……誰が……誰がこんなやつ(このような人)と友達だって(ですって)!?」
 彼女たちは彼が出て行ってから時間が動き出したようにゆっくりとロウトーゼのほうを向き、言葉を吐き出した。
 さすがにロウトーゼは二人の大きな声に驚き、冷や汗をかいて、
「……あ、ああポーターならもう行ってしまったよ?」と答えるのが精一杯だった。
「「どうして、こんなやつ(このような人)と仲が……」」お互い横目で相手を見る「「フン!」」とお互い視線をそらしてしまった。
「「もう自分のへやに戻ります(戻らせていただきます)!」」
 そういうと、彼女たちは並んで小突きあいをしながら出てってしまった。
 二人を見て、投げかけるように後の始末を伝えてから、
「……仲は悪そうに見えるのに、息はぴったりか」
 困り顔でロウトーゼは彼女たちを見送った後、もう一度さっきの少年のことをふわりと考えた。
……不思議な子だな。もう一度会えるかな?……
 と思いをめぐらせながら自分の部屋を見て
「……」
 ふぅ
「……とりあえず、リコとミグナのどちらかに部屋を替わってもらうとしよう」
 さすがに花びんを枕にして、ひっくり返ったベッドに寝るのはごめんだった。


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 こんにちは、Barovsです。

ええ、日記のほうでも書いたのですが、体を壊しました。
ですから、キリのいいところまでを更新して、ちょっぴりやすもうかな?と思っていたりします。
続きは書いてはいるんですけどね。
なかなかうまくいかないものです。
ええ、内容のほうなんですが、私はこてこてが好きなのでちょっとしたいざこざをかいてみました。
個人的に凝ったところは、この三人の間でコンタが出てきたわけですが、あえて少年で済ませました。名前を知らないわけですから。
という理由で。
バゼイシャー・ガワーのときを聞かれるとなんともいえないので勘弁してください。

時間はゆっくりと動き出しましたよ。この次の次あたりでヒロインを出しますので、頑張っていけたらいいなと思っています。
それでは。次ももし私が書くことをあきらめなければ、そこで会いましょう。

乱筆多謝。


作中チョコッと解説。
ビュッフェ:ええ、これは。バイキング形式の別名です。バイキングは和製英語のため海外では通じません。ほかにブッフェとか色々言い方があるわしいのですが、ビュッフェがなんかかっこよかったので使ってみました。


 

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