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 赤ん坊が生まれるとき、本当は母親のほうが泣きたいほど痛いにもかかわらず、まるでそれを取って代わるように赤ん坊が泣き叫ぶというのは周知の事実である。
 当然母親の胎内で生を受け、生まれてくるときに彼女も同様にその定義に従った。そしてそれが彼女にとって生まれて初めて泣いたときである。彼女は少なくとも成人を向かえる前に「生まれた赤ん坊が初めて覚えるのは呼吸と泣くこと」という事実を知ることになるだろう。しかし彼女が知ったのはその一番目ではなく二番目、つまり母親の腕からメトカーフ夫妻――既に走り続けることをやめ、のんびり歩き出してる――の腕の中にわたったときに泣いたときのことのほうを先に知った。当時メトカーフ夫妻は、まだこの世界に生れ落ちてから一日もたっていない赤ん坊が泣いているのは、間違いなくこの目の前の顔だけを見せてほかをローブで隠している母親のせいであると理解していた。だがそれよりも前に彼らが気づいたことは、この子が少なくとも母親には認められていないわけではない、むしろ愛されていることだった。その証は、おそらく我が家の扉をたたく前から見せていた涙がそれを語っていた。だから片言で間違いながらもこの国の言葉をしゃべることや、こらえた泣き声のためにいっそう聞き取りにくくなっていることなどたいした問題でなく、なにより流暢に話さなければならないなどというのはメトカーフ夫妻には無用だった。ただ彼女は必死に「 こ、この子を、も、も、も、もらってく、くれませんか?(ク、クッド ユー  ゲ、ゲ、ゲット マイ ドウ、ドウタァ ?) 」と懇願するだけだった。


CHAPTER TWO
 The Ship Orbit


     切符売り場と求人場の間


「ふわぁぁ」
 彼は朝をヘラヌ漁港の近くの木の根元で一晩を明かした。
「……ねむい……」
 コンタ・ロスノフスキは家を出てからおよそ5時間後自分は大いに間違えていることに気づいた。気づいた理由は海に出たときで、間違えたところはここが大陸ではなく島だということと、こちらはヘラヌ漁港の逆の方向であることだった。それから彼は海岸沿いに走りまた5時間過ぎたところでヘラヌ漁港に着いたのだった。それから6時間は寝ていてもよかったのだが、一年間のトレーニングで身についたのは基礎体力だけではなく、早く起きるという習慣も身についていた。ヘラヌ漁港を陸地から入り近くの水のみ場で洗顔した後、この町本来の姿である港へ向かった。
 ヘラヌ漁港はロロック島に入ってくるすべての物品の流れを舵(かじ)していた。この島は本当なら地図にも載らない場所なのだが、時代と流れがそれを許さなかった。その原因はというと。もともと小麦を使って作られるスパゲッティは大陸のほうではもう確立していたのだ。その調理方法は応用がとても利きやすくソースは野菜をベースに作られて、最も親しまれた。ではスパゲッティがなぜこの島発祥と呼ばれているかは、新しいソースからくるものだった。その素材は海産物をベースにしたものだった。これから生まれたのがペスカトーレ≠ナある。これはすぐに世界各国の料理人とそれ以外の人々に広まり、料理人にはペスカトーレ≠ェロロック島で生まれたことが、それ以外の人々にはそのおいしさが伝わることになり、地図に載るまでになった。つまり二つのソースは二つのパスタを作り出した。
 コンタはここにくるのは半年ぶりである。内向的な彼は一年前、ここに街があるというのも知らなかった。しかし、月日は彼を大きく変え――もしかしたら最初から――すべてにおいてとはいえないが向学心、好奇心旺盛なものにした。彼はゆっくりと歩き、町を観察しながら、港へ向かった。自分は獣人ということを理解しているが、もともとこの島は自然が多いのに対しヒトが多い、だからほかの獣人を見ると少し目が移ってしまう。耳を髪の中から生やしているのに、尻尾が見えない獣人。半そでシャツを着ているために見えている肌にうろこのようなものがところどころある人。はたまた、鼻が異様に長かったり、耳が顔くらい大きい人もいる。
 「いろんな種族がいるんだなぁ」
 糸目の中はおそらくランランしているだろう。
 そういう人たちをたくさん見ているうちに、少しずつ波の音が大きくなり突然。
 ボオオオオオォォォ
「うわっ」
 コンタは耳寝かせ思い切りふさいだ。目も思い切り閉じるほどの轟音だった。
「いったい何が……うわぁ」
 開けた目に飛び込んできたのは、こんな大きな船を作ったのは絶対に巨人だ。そうでなかったとしたら僕のような普通の背丈の人がどれだけの人数で作ったというのだろう。と思いたくなるほどの大きな (シップ) だった。そして、この音を鳴らしたのはどうやら船の前のほうにある煙突らしかった。煙突は白い煙をモクモクと出していた。
 コンタは言葉を失った。自分が来なかった半年の間のいつからこんな煙を吹く船が出てきたのだろう。この疑問ははやる気持ちですぐに消えてしまった。彼は今すぐにこの船に乗りたくなった。乗船の切符売り場はコンタの糸目でもすぐに見つかり、かけていった。
「おはようございます」コンタは新聞を読んで顔の見えない第二者に元気よく挨拶をした。
 その第二者である切符売りは雑誌をたたみ脇によけコンタを見た。
「ん、おはよう」
 切符売りはまるで青銅の大鐘をたたいたような低い声で彼の挨拶に答えた。一瞬コンタは出す言葉をのどの奥のほうに追いやった。バゼイシャーの顔の大部分は古傷で形成されており、その代表として額右から左頬まで線が引かれたような傷を持っていた。彼の唯一の救いは目がちゃんと一対あることだった。
「どうした? 目を (つむ) るほどこの傷がすごいか?」
 バゼイシャーはこの顔をみて驚かれたことは何度もあったが、泣かせてしまったのは子供と目を合わせるくらいで、どうみても十代そこそこの少年に目を瞑られるほどの顔はしてないという確信はあった。
「え、あ、はい、傷には驚きましたが、これは生まれつきです」
 動揺しながらも、コンタはしっかりと答えた。
「そうか。で、なんかようか?」
「はい。理由はひとつかしかないです」
 バゼイシャーは犬歯が見えるほど小さく笑い「期限は?」ときく。
 コンタはその単語を聞いて少し疑問を覚えたがすぐに、どこまで? といっているのだと思い「大陸に着くまでです」と答えた。
「というと……ヴェルトリオールまでだな。……少し短い気もするが、よし! 交渉成立だな」
「はい。それでいくらですか?」コンタは当然の質問をした。
「そうだなぁ、六百ランカ四十三ラリンでどうだ?」
 コンタはびっくりして「そんなに高いんですか?」と聞き返してしまった。
 彼は眉を寄せ「高い? 初めて言われたな、そんなこと」と首をかしげた。こちらも少なからず驚いているようだ。
 コンタは左に見える大きな船を見て「やっぱりこんな大きな船に乗るのにはそれくらいのお金を払わなくちゃいけないんですね」がっくり肩を落とし、眉をハの字にしながらため息交じりに言葉を出した。
 それをきいてバゼイシャーはもしやと思い「お前、働き口を捜してるんだよな?」と出し抜けに言った。
「え? ち、違いますよ。乗せてもらいたいんですよ、そのヴェルトリオールというところまで」顔は疑問から、あっという間に否定の顔になった。
 バゼイシャーはあきれた顔をして「ここは切符売り場じゃねぇ。ここは船で働く人を募集してるとこだ」
「そうなんですか?」こちらも気づいてききなおした。
「そうだ、切符売り場はあっちの橋のとこだ」とあごが指の代わりのようにコンタに教えた。
「ちなみにヴェルトリオールまでは八十ランカだ」
「あ、はい、わかりました。すみませんでしたなんか僕の勘違いで」コンタはまたハの字の眉をし、謝った。
「この顔で切符売ってたら商売あがったりだ。こんな顔じゃ誰も乗らんだろ」バゼイシャーは自虐的に彼に言った。
「そうですねぇ」コンタはそれに同意した。
「そこは本当だとしても否定しろ」
「すみません」コンタは深々と頭を下げた。
「朝早いから、買うなら今だぞ?そろそろ増えだすからな。」
「はい!いろいろすみませんでした」とコンタはもう一度深く頭を下げ本当の切符売り場へ向かった。


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 こんにちは、Barovsです。
ぼち…ぼち…っと第二話が始まりました。
一万字書いてからアップしようと思いましたが、どうやらむりそうですし、読みにくいことに気づきました。
というわけで、約3千を目安にやっていこうと思います。
この章はまだ迷い中で、ヒロインを出すかどうか迷っています。
次の章から出そうかなとひそかに考えてみたりしているのですが、やっぱりやめようか考えたり、やっぱり出そうか…
こんな感じです。
でも何より、第二話を書き始める元気が私にあって良かったです。
それでは…

乱筆多謝。
 

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